父が、宅配弁当をやめようかと迷っていました。
背中を痛めて動けなくなった父のために、試しに1週間という約束で始まったお弁当です。
父は「おいしかった」と言っていました。
それなのに、やめる方向に気持ちが傾いていたんです。
おいしいし、楽だから続けたい。
でも、毎日頼むとお金がかかる…。
今回は、高齢者の宅配弁当の使い方についてのお話です。
1週間限定で取った宅配弁当
お盆を過ぎた頃のことです。
父が動けないと、母の食事を作る人がいません。
そこで、母のケアマネジャー(介護の計画を立てて、サービスを調整してくれる専門職)が手配してくれたのが、高齢者向けの宅配弁当でした。
介護の現場では「配食サービス」と呼ぶことが多いです。
ただ、これは父の痛みが治まるまでの、1週間だけという約束です。
幸い、父の痛みは少しずつ治まっていきました。
となると、お弁当をこの先どうするのか、決めなければいけません。
1日2食を2人分、毎日頼むと7万円?
1週間がたった頃、父に電話で聞いてみました。
「お弁当、どうだった?」
すると父は、
「おいしかったから、これからも取ろうかなと思ってる」
と言います。
でも、話には続きがありました。
「ただ、昼と夜、2人分を毎日取ると、月に7万円かかるんよ」
父は、自分で計算して出た金額に驚いたそうです。
毎月これだけかかるとなると、続けるのは難しい。
話を聞いていると、父の気持ちは「やめようか」に傾いているようでした。
でも、宅配弁当は、毎日毎食頼むか、やめるかの二択ではありません。

全部お弁当にすると楽だけど…
お金の問題がなくても、私は「全部お弁当にすればいい」とは思えませんでした。
実は、父は料理が得意。
お盆に帰省したときも父の料理を食べましたが、やっぱりおいしかったです。
介護の現場では、「できることは、できるだけ続けてもらう」という考え方を大切にしています。
手を出しすぎると、せっかくそれまでできていたことが、できなくなってしまうからです。
だから、料理の上手な父から、作ることを全部取り上げてしまうのはもったいない。
そんな気持ちがありました。
でも、今回のことで分かったこともあります。
父にとって、毎日の食事作りは、もう楽な作業ではなくなっていたんです。
私はそれまで、母の食事のことばかり気にしていました。
作っている父がどれだけ大変なのかまでは、ちゃんと考えていなかったと思います。
できることは続けてほしい。
でも、夜の調理くらいは、楽をさせてあげたほうがいいのかな。
そう思いました。
夜だけ頼む、という選択肢
両親の朝ごはんと昼ごはんは、毎日ほぼ決まっているんです。
朝は、父が作る野菜と豆腐のみそ汁に、ちりめんじゃこ、ちくわやさつま揚げ。
昼は、トーストと目玉焼きに、ハムとトマト、キュウリ、ブロッコリーなどを添えます。
どちらも、切るだけ、ちょっと煮るだけ、焼くだけでできる簡単なものです。
買う食材も決まっているので、スーパーで選ぶのも、持ち帰るのも楽です。
大変なのは、夜なんです。
何を作るか考えて、材料を選んで、買ってきて、作る。
夜ごはんがお弁当になれば、この手間がなくなります。
それでいて、朝と昼の料理は、これまで通り父の手に残ります。
そこで私は、父にこう伝えました。
「夜だけ取るとか、週に何回かだけ取るっていう方法もあるよ」
これは、その場の思いつきではありません。
訪問介護の仕事をしていて、宅配弁当を上手に使っている利用者さんをたくさん見てきたからです。
毎日三食作るのが大変だから、ときどきお弁当にする方。
夕食作りが大変だから、夜だけ頼む方。
自炊だけだと、どうしても栄養が偏ってしまうから、週に何回か取り入れる方。
理由はいろいろですが、毎日三食すべてをお弁当にしている方ばかりではないんです。

提案したら、待ってみる
父は、人の話をちゃんと聞いて、受け止めてくれるタイプです。
このときも、
「なるほど、そういうやり方もいいね」
と言ってくれました。
そして、
「しばらくいつも通りにスーパーで買い物をして、どれくらいお金がかかるか計算して、お弁当と比べてみる」
と続けました。
私の提案を受け入れながらも、自分でも確かめてから決めようとしている。
それなら、あとは父に任せよう。
そう思って、私はそれから1週間、お弁当のことには触れずに見守ることにしました。
値段だけでは決められない、手渡しのメリット
待っている間、私も私なりに考えていました。
もしお弁当を続けるとして、それでもお金が心配なら、冷凍のお弁当という手もあります。
私が値段を調べて、ネットで注文してあげることもできます。
でも、考えてみると、高くても地元のお弁当屋さんにするメリットがありました。
それは、毎回、玄関で手渡ししてくれることです。
受け取り方は、ケアマネさんが考えて決めてくれていました。
呼び鈴を押して、父が出てきたら、玄関で手渡し。
父が出てこなければ(2階から降りてこられないときや、外出しているとき)、母が受け取れるように台所のテーブルの上へ。
通院などで誰もいないときは、外のボックスへ。
父が出てこられない日のことまで考えて、決めてくださっていたんです。
つまり、お弁当が届くたびに、誰かが父の様子を見てくれている、ということでもあります。
冷凍のお弁当がまとめて宅配便で届くのとは、ここが違います。
これは、値段には代えられないな、と思いました。
それに、私が冷凍のお弁当をネット注文してしまったら、父が自分で頼んで、自分で払う、ということもなくなってしまいます。

父が決めた「夕食を毎日」というカタチ
それからしばらくして、父に聞いてみました。
「お弁当、どうすることにしたの?」
すると父は、
「夜だけ取ることにしたよ」
と言いました。
電話の声も明るくて、お金のことにも納得しているんだなと感じました。
買い物や調理の負担が減ってずいぶん楽になったとのこと。
ご飯は自分で炊いているので、食べる量も自分で調節できているようです。
昼と夜の両方を頼めば、1日に2回、様子を見てもらえることになります。
それも考えました。
でも、父の体調も戻ってきた今は、1日1回の声かけくらいがちょうどいいのかなと思っています。

おわりに|高齢者向け宅配弁当のまとめ
今回、宅配弁当のことで、改めて大事だと思ったことをまとめておきます。
頼み方・受け取り方を工夫できる
- 回数も時間帯も選べる
毎日でなくてかまいません。昼だけ、夜だけ、週に何回か、という頼み方ができます。
- 受け取り方も決められる
手渡し、家の中の決まった場所に置く、外のボックスに入れるなど、選べる場合があります。
- おかずだけ頼める
ご飯は自分で炊けば、食べる量も自分で加減できます。
※頼み方も受け取り方も業者によって違います。
※ケアマネさんの紹介であるとき、その方に合った受け取り方を考えて、業者さんと調整してくれることもあります。
※ケアマネさんに相談するときは「配食サービス」と言うと伝わりやすいです。
どの一食を頼むかは、負担が大きいところで決める
- 調理の負担は「作ること」だけではありません。
献立を考える、材料を選ぶ、買って持ち帰る、作ったら片付ける、冷蔵庫内を整頓する、ここまで含まれます。
- いつも決まったメニューなら、その分の負担は軽いはずです。
負担がどこに集中しているかを見てから決めます。
- 負担の軽い調理は続けることができます。
「やめる」と言ったとき
- 「全部頼むか、やめるか」の二択で考えているかもしれません。
- やめたい理由を聞きます。
お金なのか、味なのか、受け取りが面倒なのか。
理由が分かれば、別の形が見つかります。
- 「高いから」と言ったとき、何をどう計算したのか、聞いてみます。
毎日・全員分・全食で計算していることがあります。
手渡しは、見守りにもなる
- 誰かが親の顔を見ることになります。
- 回数を増やせば、見てもらえる回数も増えます。
- 体調が悪くて取りに出られない、外出していて受け取れないなどの場合はどうするかもあらかじめ確認しておきましょう。
今回、私がしたのは、頼み方をいくつか提案することだけでした。
あとは父が、「毎月払える金額」で、「食事作りの負担がほどよく楽になる」頼み方を、自分で考えて決めてくれました。
もし私が近くに住んでいたら、あれこれ世話を焼き、一方的に決めていたかもしれません。
今回は、遠距離介護だったことが良い方向にはたらいたみたいです😊
